夕日が、広大な戦場を寒々と照らしていた。動くものは死体に集(たか)る鴉のみ。斜陽はもう半刻のうちに、西の彼方へと姿を隠してしまうだろう。
彼女は返り血に塗(まみ)れたまま、焼け枯れた梨の木に身をもたせ掛けている。そしてただぼんやりと、何を見つめるでもなく、その風景の中に在った。
―――何の為に―――
言葉にならない疑問と出したくもない答えが、黄昏の裡で交錯を続けている。
さりとて、それらを抱えたまま去ることもできず、彼女は只ただ、そこに在った。
だがその時。彼女は規則正しい足音が近づいてくるのに気が付いた。その足音の主を知っているもの
であろうか、振り向きもしない。
足音は彼女のすぐ背後で止まると、重い音と共に何かを大地に突き立てた。
―――四聖大剣。
青く光を帯びた、導き神伏羲の持ち物。
その主は問いかける。